埼玉県を中心に関東一円(東京・神奈川・千葉・群馬・栃木・茨城)で環境計量・化学分析を行っています。

第1回 自分にとっての外来生物(外来種)問題

 生物屋のIです。
 子供のころから昆虫が好きで、大学で「昆虫学研究室」に入ったのが運の尽きでした。時間とともに症状は悪化し、ついには、昆虫研究のために修士課程へ進むという選択をしました。
 「ハナバチ*1」の仲間を研究テーマにしていたのですが、修士課程で自分を待っていたのは、ブラジル出身で、黒くて、小さくて、かっこいいとは言い難い相手でした。

 「カベハリナシバチ*2」と名前を紹介されましたが、最初自分は、「なにそいつ?」、「なんで自分がそんなのを??」といった感じでした。

【写真:入口をガードするカベハリナシバチの働きバチ】


【写真:巣の中の女王バチ(上中央)】


 しかし、こいつは見かけによらず、なかなか面白いヤツだったのですが、紹介者(先生)から課せられた「花粉媒介昆虫として実用化する*3」という目標が、自分を苦しめることになります。それまで、野外でのフィールドワークが中心だった自分にとって、「外国産の昆虫を大規模に飼育する」というのは、未知の世界でしたし、大変な困難を伴いました。

【写真:花粉・花蜜源として多くの花で満たされた実験温室内の様子】


【写真:実験温室の周りで、通年で花を供給するために花を育てています】


 ブラジル出身のあの子(ハチ)のために、自分は本当に頑張りましたが、結論をいうと、色々と問題があり、花粉媒介昆虫として実用化するには至りませんでした。
 そののち、自分が修士課程を卒業し、就職したころから、ヨーロッパで「花粉媒介昆虫」として実用化された「セイヨウオオマルハナバチ」が、日本に入ってくるようになりました。ある意味、自分が学生時代に目指していたものが、現実のものとなっていったわけです。
 しかし、「セイヨウオオマルハナバチ」は、農家の方々に多くのメリットをもたらした半面、野外へ逃げだした個体が、生態系へ悪影響をあたえるとして、大きな問題になっていきました。
 当時の自分は、このような問題を目の当たりにして、大変複雑な気持ちを抱いていました。

【写真:セイヨウオオマルハナバチ(環境省提供)】


【写真:商品化されたセイヨウオオマルハナバチ】


 2006年、「セイヨウオオマルハナバチ」は外来生物法により「特定外来生物」に指定され、飼育・保管・運搬等が法的にも規制されるようになりました。
 花粉媒介昆虫としての利用についても、「クロマルハナバチ」などの在来種への転換が進められていて、将来的には全廃を目指す指針がまとめられています。
 また、野外で定着してしまった個体に対しても、盛んに駆除活動がおこなわれています。

 現在、「環境アセスメント・生物調査」関連の仕事をしている自分ですが、上記のような経験から、「外来種問題」には特別な思い入れがあります。今後もこの問題は、追いかけていきたいと思います。
 「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」を見ると、今回とりあげた「セイヨウオオマルハナバチ」以外にも、ヒアリ(アカカミアリ)、コカミアリ、アフリカミツバチとアフリカ化ミツバチ、アルゼンチンアリ、ツマアカスズメバチ、チャイロネッタイスズバチ、ナンヨウチビアシナガバチといった、多くの「ハチ・アリ」の仲間が名前を連ねています。
 残念ながら、自分が専門としてきた、ハチ・アリの仲間は、外来種問題において、問題児となることが多いようです。

*1ハナバチ:ハナバチ(花蜂)とは、ハチ目ミツバチ上科の昆虫類のうち、花粉や花蜜を集めて幼虫の餌とするものの総称で、ミツバチやマルハナバチ、クマバチなどが含まれます。

*2カベハリナシバチ:ハリナシバチ族の一種で、ブラジルに広く分布します。ハリナシバチ族は、熱帯から亜熱帯にかけて広く分布しますが、日本には分布していません。ミツバチのような、女王と働きバチからなるコロニーを作りますが、ミツバチと違い、針は持っていません。木の洞や土中に巣を作ります。

*3花粉媒介昆虫として実用化する:実のなる作物の多くは、昆虫による花粉の媒介を必要とする虫媒花であり、その役目を果たしてくれるのが花粉媒介昆虫です。特に、ビニールハウスなどの施設栽培では、昆虫が容易に入ってこれないことから、何らかの対策が必要になります。当時はミツバチを用いるケースが多かったものの、ミツバチも万能ではなく、他の花粉媒介昆虫の実用化が求められました。

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