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第2回 環境省 地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)に関する勉強会に参加して

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 生物屋のIです。
 今回は、つぶやきという内容ではありませんが、最近の重要なトピックですので、GBO5および生物多様性条約について取り上げました。

 先日、環境省主催の「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)に関する勉強会」にオンライン参加しました。
 勉強会の内容は「地球規模の生物多様性」に関するものであり、自分なんかが、あれこれと書くには、大きすぎるテーマだと思ったのですが、社内情報共有のためと、自分自身の勉強のためにまとめてみました。

 近年、生態系の破壊や野生生物種の絶滅、そして遺伝子の多様性の損失に対する懸念が高まったことから、「生物の多様性を包括的に保全し、生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組み」を設ける必要性が生じてきました。その結果、1993年12月29日に国際条約として発効したのが、「生物多様性条約」になります。
 この条約では、以下の3つの目標が掲げられています。

 1.生物の多様性の保全
 2.生物の多様性の持続可能な利用
 3.遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分

 日本を含む193の国と欧州連合(EU)が本条約を締結していますが(米国は未締結)、締約国には、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とする「国家戦略(国家計画)」を作成し、実行することが義務づけられます。
 そして、おおむね2年に1回のペースで、最高意思決定機関である締約国会議(Conference of the Parties/COP)が開催され、締約国代表による、国際的ルール作りや目標設定など、生物多様性保全に係わる様々な話し合いが行われます。
 以下に、締約国会議中心とした生物多様性条約の大まかな流れを追ってみたいと思います。

・2002年にオランダ・ハーグで開かれたCOP6において、「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という「2010年目標」が採択される。
 COP6は条約発効後10年目の節目にあたり、それまでの対話中心の流れから、より具体的な行動を展開していくという流れを作った、節目の会議となりました。

・2010年に「地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)」が公表される。
 「2010年目標」について、「世界的レベルで達成された項目はない」と評価しており、生物多様性は引き続き減少していると結論づけられています。

・2010年に愛知県名古屋市で開かれたCOP10において、2020年までに達成すべき「20の目標」、いわゆる「愛知目標(愛知ターゲット)」が採択される。
 愛知目標は、2050年までの長期目標として「自然と共生する世界」の実現と、2020年までの短期目標として「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ことを掲げています。
 ここで「愛知目標」の詳細を書くと長くなってしまいますので、詳しくはリンク先などをご覧ください。

環境多様性センター「愛知目標(20の個別目標)」のページ
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/aichi_targets/index_03.html

・今年9月15日に愛知目標の最終評価を記した「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」が公表される。
 (今回の勉強会は、この最終評価書についての勉強会になります。)
 「GBO5」でまとめられた、「愛知目標」の最終評価は、「かなりの進捗が見られたものの、完全に達成できたものはない」となっています。
 今回の評価には、「かなりの進捗が見られた」の表現が入り、一歩前進した感じもありますが、やはり厳しい評価となったと言わざるをえないでしょう。
 ただし、マイナス面ばかりではなく、着実に効果が上がっている部分もあり、過去10年間に比べて世界的な森林破壊の速度が約3分の1に減少した、陸域および海域保護地域は大きく拡大した、近年の保全活動が無かった場合に過去10年間の鳥類及び哺乳類の絶滅は2~4倍ほど高かっただろう、といったことを報告書は指摘しています。
 今回の勉強会でも、事務局の方から「行動を起こしたものについては、成果は出てきている」、「今後、生物多様性をコントロールしていくことは可能だと思う」といった前向きな言葉がありました。
 GBO5の内容だけでも、ここでは書ききれないほど多岐にわたっています。より詳しく知りたい方はリンク先などもご覧ください。

「Global Biodiversity Outlook 5(英語)」
https://www.cbd.int/gbo5
「環境省 地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)政策決定者向け概要要約」
https://www.env.go.jp/press/files/jp/114738.pdf

 以上、2020年GBO5発表までの流れを追ってみましたが、今年、2020年は、国連の定めた「国連生物多様性の10年」の最終年、かつ生物多様性条約「愛知目標」の目標年であったことから、「生物多様性スーパーイヤー」となるはずの年でした。
 しかしながら、新型コロナウイルス拡大の影響は大きく、国際会議なども相次いで延期されたことから、「生物多様性条約」も足踏みを強いられる形となってしまいました。 それでも、世界はすでに「ポスト2020」に向かって動き出しています。
 次回、締約国会議(COP15)は、来年、2021年5月に中国・昆明での開催が決まっており、「ポスト2020目標」が採択される予定です。
 より詳しく知りたい方は、ぜひ以下のリンクなども併せてご覧ください。

生物多様性センター(環境省)
http://www.biodic.go.jp/
環境省 生物多様性
http://www.env.go.jp/seisaku/list/biodic.html
外務省 生物多様性条約
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html
経済産業省 生物多様性条約
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Seibutsukanri/index.html
農林水産省 環境政策(生物多様性と農林水産業)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/index.html

生物多様性国家戦略(生物多様性条約及び生物多様性基本法に基づく国の基本的計画)
生物多様性センター 生物多様性国家戦略
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives/index.html
次期生物多様性国家戦略の策定
生物多様性センター 次期生物多様性国家戦略の策定に向けて
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives5/index.html

カルタヘナ議定書(生物多様性条約バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書)
外務省 カルタヘナ議定書
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/cartagena.html
生物多様性センター カルタヘナ議定書関連情報
https://www.biodic.go.jp/bch/bch_1.html

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