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第3回 ザリガニ類とヒアリ類を中心とした特定外来生物追加指定についての話

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 生物屋のIです。
 令和2年11月2日、「外来生物法」が一部改正され、14種類が新たに特定外来生物に追加されました。

 追加指定されたのは、昆虫がすべてアリの仲間で、4種群、1種、1交雑種、甲殻類がヨコエビ1種とザリガニの仲間4科、植物が3種となっています。

 追加指定種の具体的な種名等はコチラをご覧ください。
特定外来生物の指定対象種について
http://www.env.go.jp/press/files/jp/114982.pdf

 正直、何が追加指定されたのかさえ理解し難いですね。

 ということで、少し解説していきたいと思います。
 植物は3種の種指定なので比較的わかりやすいと思いますが、アリ(昆虫)とザリガニ(甲殻類)のところがややこしい感じです。
 まず、アリ(昆虫)についてですが、ハヤトゲフシアリが新たに指定種に加わったほか、すでに指定種であったアカカミアリとヒアリを含む、ヒアリ類4種群23種、およびその交雑種がグループごと一括指定されています。
 グループごと一括指定されたところがわかりにくいですが、ヒアリ類は形態的に酷似していて、分類が困難であること、雑種を形成すること、生態的にも類似していて同様の被害を及ぼすおそれがあることなどからこのような形の指定になったみたいです。
 少しわかりやすくするために、改正前と改正後のアリ類の指定種類を図にまとめてみました。



 なお、ヒアリ類に含まれる具体的な種名、および日本への定着実績、被害の事例などが、以下のリンク先にまとめられていますので、詳しく知りたい方はそちらもご覧ください。

ヒアリ類(ヒアリ、アカカミアリを含む4種群 23 種及び各種間の交雑種)
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/data/sentei/insect11/02_kontyu_11_siryo2_1.pdf

 最後に甲殻類についても解説していきたいと思います。
 自分は昆虫が専門で甲殻類は専門外ですが、面白そうなので、この部分を頑張ってまとめてみたいと思います。

 今回、追加指定された甲殻類は以下のとおりです。
・ディケロガンマルス・ヴィルロスス
(killer shrimpとも呼ばれる非常に貪欲なヨコエビの一種。ヨーロッパ原産。)
・ざりがに科全種
・アメリカざりがに科全種(アメリカザリガニを除く)
・アジアざりがに科全種(ニホンザリガニを除く)
・みなみざりがに科全種

 ディケロガンマルス・ヴィルロスス(ヨコエビの一種)を除くと、すべてザリガニの仲間です。
 ザリガニ類の特定外来生物追加指定を簡単に言ってしまうと、アメリカザリガニとニホンザリガニを除く、すべてのザリガニを特定外来生物の指定対象種にしたということだと思います。
 もう少しわかりやすくするために、ザリガニ下目に含まれる各科の関係を図に整理してみました。



 大体こんな感じになると思います。
 ザリガニの仲間といった場合、ザリガニ下目に含まれる、淡水性のザリガニ上科とミナミザリガニ上科を指し、ここに含まれるすべての種(緑塗り部分;ただし上述の2種を除く)が特定外来生物に指定されたのだと思います。

 ちなみに、ザリガニの祖先は、海産のアカザエビの仲間から、“ただの一回”だけ淡水域へ生息域を広げることに成功し、その後、世界中に広がっていったのだそうで(単一起源説)、この説が正しければ、日本のザリガニも、北米のザリガニも、すべてのザリガニがただひとつの共通祖先を持つということになります。
 自分は、単一起源説の信ぴょう性を語れるだけの知識を持ち合わせていませんが、なかなか興味深い話だと思いました。
(単一起源説だと上の図も変わって来ますね)

 次に、在来種の存在があってこその特定外来種指定であること、そして日本には貴重なザリガニが生息しているということも知っていただきたいので、日本に産する3種のザリガニについて説明していきます(といっても3種のうち2種が外来種ですが)。

・ニホンザリガニ(Cambaroides japonicus
 北海道と東北北部に分布する日本唯一の在来種で日本固有種。体長は6cm程度と小型で、水温の低い湧水が流れる小川や山間の渓流、水のきれいな湖などに生息している。
 ザリガニの仲間は世界で 600 種ほどが知られているが、アジアには 4種しか分布しておらず、その中でも本種は特に祖先的な形質を残しているとされ、学術的にも貴重なザリガニである。
 環境改変による生息地の破壊、外来種(ウチダザリガニ)の侵入による影響、人為的放流による遺伝子攪乱、等々様々な問題を抱えており、生息数は減少している。

 ニホンザリガニの貴重性については、以下のリンク先に詳しい説明があります。
 ぜひ、リンク先もご覧ください。

ニホンザリガニのDNAに北日本の歴史が保存:地域絶滅を危惧
https://noah.ees.hokudai.ac.jp/envmi/Itsuro/attachment/crayfish1.pdf


ニホンザリガニ


・アメリカザリガニ(Procambarus clarkii
 北海道から沖縄本島まで広く見られるが、もともとはミシシッピ川流域を中心としたアメリカ合衆国南部を原産とする外来種。1920年代にウシガエルの餌として持ち込まれたのが最初といわれている。体長は8~12cm程度だが、まれに20cm近くになるものもいる。流れの緩い水田や用水路、池などに生息し、水質汚染にも強い。
 適水温はニホンザリガニに比べて高く、生息域が重なる北日本でも、ある程度の棲み分けがなされていた可能性がある。

・ウチダザリガニ(Pacifastacus leniusculus trowbridgii
 北海道に広く見られるほか、本州でも福島県、栃木県、千葉県、長野県、長野県、滋賀県などで確認されている。アメリカ合衆国北西部(コロンビア川水域とミズーリ川源流部)を原産とする外来種で、1920年代から食用目的で持ち込まれたといわれている。体長は15~20cm程度で、アメリカザリガニよりもさらに大きい。冷水性で河川や湖沼等に生息するとされるが、ある程度、高水温にも耐性を有する。
 本州各地でも生息が確認されているが、特にニホンザリガニと生息域が重なる北海道における問題が深刻。2000年頃までは北海道東部に生息域が限られていたが、近年では全道に広がってしまっている。本種は体も大きく繁殖力も強いこと、それに加えて他のザリガニに伝染する病気を持つこともあり、ニホンザリガニへ重篤な影響を及ぼすことが懸念されている。

 以上、ザリガニ類+ヒアリ類を中心に、特定外来生物の追加指定について解説してみました。

 最後にひとつ、ザリガニに関する自分自身のエピソードを書いて終わりにしたいと思います。
 自分は関東在住で、ザリガニといえばアメリカザリガニしか馴染みがありませんでした。しかし、あるとき青森県で昆虫の調査をしていた時に、たまたまニホンザリガニを見つけて、すごく感動した記憶があります。
 なんか、体は小さくて色も地味なのですが、一目見て「やばい!カッコ良い!!」って思いました。そもそも、大きなハサミを持つザリガニの形自体がカッコ良いですし、色合いも渋くて、なんとも言えないオーラを感じました。例えるなら、「渋くてカッコ良いおじ様と出会った」みたいな感じでしょうか!?
 ニホンザリガニのカッコ良さはともかく、学術的にも貴重なこのような種が、生息環境も含めて、しっかりと守られてほしいものです。

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